【ワシントン時事】同性愛者かどうかを決定付ける単一の遺伝子は存在しないが、複数の遺伝子や環境が影響する-。米ハーバード大などの国際研究グループは、30日付の科学誌「サイエンス」にこんな研究成果を発表した。

 米英などの男女約50万人について、同性との性的行為の経験があるかどうかと遺伝子の関係を調べた。それによると、性的指向に影響するものとして、統計的に説明できる五つの遺伝子の特徴が見つかった。

 同性愛と遺伝子は、これまでも家族や双子を対象とした研究で、関連があるとみられてきたが、どの遺伝子が影響するかは明らかでなかった。専門家からは「遺伝子と性的指向の関係を最もはっきり示した研究成果」と指摘する声が出ている。 

 一方、同研究によると、遺伝子が性的指向に影響する割合は最大で25%で、環境など複合的な要因があることも示している。性的マイノリティーの権利擁護団体GLAADは「同性愛が人間の自然な一面であるという、さらなる証拠を提供している」とするコメントを発表した。


 人間の性的指向と遺伝子の関わりについて、国際研究チームが約47万人の遺伝情報(ゲノム)を調べたところ、同性との性的行為に強く関わる単一の遺伝子は存在しないことが確認された。専門家は「性的指向は遺伝よりも、様々な要因が影響していることが示された」としている。

 論文は29日、米科学誌「サイエンス」に掲載された。豪クイーンズランド大などのチームは、英バイオバンクや米企業が持つ両国など約47万人分のゲノムデータを元に、「同性と性的行為をした」などと答えた人と、そうでない人との違いを見た。

 その結果、同性との性的行為に強く影響を与える単一の遺伝子は見つからなかった。一方、同性と性的行為をしない人との間には、一つ一つの影響は弱いゲノムの違いが5カ所見つかった。さらに微弱なものは多数あるとみられる。

 こうした結果を元に遺伝子の影響を推定すると、英国で約8%、米国で約24%だった。過去の小規模な研究の結果とほぼ同じ傾向だった。

 研究に関わった米ブロード研究所のベンジャミン・ニール氏は「今回の結果は(全体の結果を表すもので)一人ひとりの性的行為を推測するものではない」としている。


50万人分近くの遺伝子を調査した研究で、単一の「ゲイ遺伝子」というものが存在しないことが、米ハーヴァード大学とマサチューセッツ工科大学(MIT)による研究で明らかになた。

学術誌「サイエンス」に掲載されたこの研究はUKバイオバンクと遺伝子検査会社23andMeのデータを使い、同性愛関係に関わる遺伝子の変異を見つけた。

しかし同性愛について、遺伝子が影響する割合は最大でも25%に過ぎないことが分かった。

性的マイノリティー(LGBTQ)の権利擁護団体GLAADは、この研究によって「同性愛者の振る舞いを決めるのが素質なのか環境なのか結論できる傾向がないこと」が分かったとしている。

研究にはUKバイオバンクの登録者40万9000人、23andMeからは6万8500人が協力を申し出て、ゲノム(遺伝情報)を提供した。

対象者はまた、同性あるいは異性のパートナーの有無についても質問に答えた。

調査の結果、ゲノム全体を対象とした場合、遺伝子が影響するかもしれない同性愛行動は、8~25%だった。

特に、5種類の変異が同性愛行為に関係することが分かった。その中には嗅覚反応と関わるものや、性ホルモンに関わるものが含まれる。

しかし、これらを全て合わせても、特定の遺伝子が同性愛行動に影響する割合は1%未満だという。

「予測不可能」

この研究に携わったマサチューセッツ総合病院の分析・翻訳遺伝学ユニットに所属するベン・ニール准教授は、「性行動の決定要因として、遺伝学のかかわりは半分以下だが、それでも非常に重要な要素だ」と語った。

「同性愛をつかさどる特定の遺伝子はないし、自分が同性愛者になるかどうかを遺伝子検査で突き止めようとしても無駄だ。ゲノムから個人の性的行動を予測することは実質的に不可能だ」

23andMeの上級科学者、ファハ・サティラポンサスティ氏は、「これは人類にとっては自然で、よくある変異だ。また、同性愛に対する『治療法』など、開発すべきではないという我々の立場を裏づけてくれる。治療法探しなど、誰の利益にもならない」

ユニヴァーシティー・コレッジ・ロンドン遺伝子研究所のデイヴィッド・カーティス名誉教授は、「この研究は『ゲイ遺伝子』などというものがないことを明確に証明した」と語った。

「性的指向に決定的な影響を与える遺伝子の変異は一つもない。むしろ、非常に多くの変異が非常に緩やかなつながりを持っていることが分かった」

「この研究が示すように、同性愛者になるかどうかは遺伝子で決まるものではない。それと同時に、同性愛の性的指向は、個人が生来の人格として持って生まれる不可分の部分だということは、否定されない」

(英語記事 No single gene associated with being gay)


同性と性的行為をしたことがあると答えた人50万人を対象に遺伝子を分析した結果、人の性的指向に強く関わる特定の遺伝子は存在しないとする研究結果を国際的なグループが発表しました。人の性的指向は複数の遺伝子や環境などの要因で決まるとしています。

アメリカのマサチューセッツ総合病院やオーストラリアのクイーンズ大学などのグループは研究機関などが保管している遺伝子のデータを使って、事前のアンケート調査で同性と性的行為をしたことがあると答えた人の遺伝子データおよそ50万人分をゲノムワイド関連解析という手法を使って分析しました。

その結果、同性との性的行為に統計的にみて関連する可能性がある遺伝子が、男性の薄毛に関する部位や、匂いに関する部位などに5つ、見つかりましたが、その役割は限定されていて、グループでは人の性的指向に強く関わる特定の遺伝子は存在しないと結論付けました。

これについてグループは「ほかの多くの人間の行動と同じく、性的指向も、遺伝的な要因と環境的な要因が複雑に結び付いて起きていることが改めて示唆された」と話していて、遺伝子の分析から人の性的指向を予測するのは不可能だとしています。

また性的マイノリティについての知識の啓発を行うNPO、GLAADは「研究結果は性的マイノリティのアイデンティティを議論するためのものではない」としたうえで、「今回の研究によって同性愛は人間にとって自然なことだという、さらなる証拠が示された」とするコメントを出しました。

この論文は今月30日付のアメリカの科学雑誌、サイエンスに掲載されます。