「今思えば、少し軽率であったのかなと」。そう片山さつき地方創生担当大臣が釈明したのは、「口利き」疑惑に関与したとされる税理士に参議院の「通行証」を貸し出していた問題だ。税理士について片山大臣側は過去3年半にわたって「私設秘書」として申請していたという。

 「通行証」の問題は与党議員にとどまらない。野党・国民民主党の大西健介衆議院議員も、人を介して依頼された元コンサルタント会社役員に通行証を貸与していたことがわかっている。元コンサルタントは文科省汚職事件に絡み“霞が関ブローカー“と呼ばれていた人物だ。大西議員は「まともに話したこともないのに渡したのは軽率だった」と話している。

 国権の最高機関で浮き彫りになった対策や管理の甘さ。13日放送のAbemaTV『AbemaPrime』では、国会の安全の問題を議論した。

■「信用」で運用されてきた通行証

 国家やその関連施設への通行証(記章)には、政策・公設秘書や私設秘書向け、報道関係者向けの他、34種類に細かく分かれており、顔写真付きの通行証もある。

 通行証を貸した経緯を大西議員の事務所に確認したところ、同期当選で当時は落選中だった吉田統彦氏が「元コンサルタントの国会通行証を代わりに出して欲しい」と依頼してきたのが発端で、吉田氏による身分保障があることから大西議員は貸与。そして昨年、吉田氏が再び当選した後に返却してもらったのだという。大西議員は「一回しか会っておらず、渡したのは軽率だった」と話しているが、通行証はそれほど簡単に貸すことができるのだろうか。

 元衆議院議員であり元警察官でもある中島正純氏は、今でも通行証を所持している。「一度衆議院議員になった者には一生配布されるので、今もこれで出入りしている。落選してから一定の期間を過ぎても、希望すればもらえる。審査はない」と話す。

 「議員の紹介、秘書の紹介の場合も、基本的には“信用“。通常来訪者は名前や肩書などを記入しなければならないが、議員が連れてきた場合、受付も手荷物のX線検査もない。今回の場合、議員会館や文科省にも出入りする必要があったと思われるので、おそらく私設秘書の通行証を貸したのだろう。これは議員の許可がいるものだが、秘書だという実態はなく、どんな人かさえも分からなかったというのは普通であればありえないこと。大西議員とは同期生の私としても非常に残念だ」。


 元議員秘書でコラムニストの尾藤克之氏は「さすがに首相官邸は入れないが、私設秘書の通行証であれば参議院や関連施設の中は基本的に入ることができる」と話す。また、各議員会館の事務所には「事務通行証」と呼ばれるものが1枚ずつ割り当てられており、尾藤氏によれば「例えばお客さんが会館の受付に来たが、自分の事務所の通行証が出払っているということもある。そういうときに、隣の事務所に行って“貸してもらえますか““あ、いいよ“と、そういうことはよくある。もちろん良くないことだが、“常識的な範囲“でということで運用されている。入館の際には職員が見ているし、何らかの形で記録しているとは思うが、リスクしかない」とした。

■国会内の警備を担う「衛視」に拳銃の携帯はなし

「通行証」は”信用”で運用されてきた!? 拳銃を携帯していない「衛視」…国会議事堂の安全リスクを考える

 国会には、さらなるリスクも懸念される。それがテロ対策だ。カナダの国会議事堂では男が銃を乱射、死傷者が出る事件が起きたほか、昨年3月にはイギリスで、6月にはイランで襲撃事件が起きている。日本では2014年10月、国会に不審な男が侵入し現行犯逮捕されているが、捕まえるまでには1時間半もかかったという。

 そもそも国会は外部からの干渉を受けないよう、警備は「衛視」と呼ばれる国会職員が担っており、警察官は許可なく国会内に入ることができない。また、衛視の装備は盾・さすまたなどで、2015年以降は警棒やネットランチャーも配備された。しかし、警察官のように拳銃は持っていない。3年前には国会内初となる警視庁と国会の合同対策訓練が行われ、およそ55年ぶりに制服を着た警察官が議事堂内に入った。しかし合同訓練はこのとき限りだ。

 「弁護士ドットコム」GMの田上嘉一弁護士は「国会議員は政府と敵対する関係にもなるため、明治以来、警察に介入させないことになっている。今後は衛視の力を高めるというのも方法の一つだ」と話す。

 中島氏は「当然、国会や議員会館の周りは機動隊が囲んでいるので、不審者が近寄ることは難しい。さらに受付を通るときにも色々なゲートがある。衛視はいつも夕方から道場で柔道の練習もしておられるし、非常に強い。ただ、今回の通行証の問題で安全神話は崩れてしまった。私は衛視にも警察官と同じような装備を持たせるべきだと思う」と話す。

 作家の乙武洋匡氏は「裏切りが跋扈している政治の世界なのに、これだけ信用で動いているのはちょっと面白いなと思った。どんな業界にも“ローカルルール“はあるが、今回のことを機にリスクがあるということをどんどん報道し、このローカルルールはこのままでいいのかということをみんなで考えることが必要だと思う」と指摘。エッセイストの小島慶子氏は「汚職を目論んでいるということではなく、色々な人間関係の中で動いている政治の世界では、いつ、誰がどんな話をしに来たのか、あまり公にしたくない、記録にも残したくないという場合があると思う。しかし、誰がテロリストになるか分からない以上、どう現実と摺り合せていくかだろう」と話していた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)