京都大は9日、ヒトのiPS細胞(人工多能性幹細胞)から作った細胞を、神経難病のパーキンソン病を患う50代の男性患者の脳に世界で初めて移植したと発表した。医師主導の臨床試験(治験)として、今年8月から準備を進めていた。治験で有効性や安全性を確認し、早期の保険適用を目指す。

 京大病院によると、京大が作製・備蓄している他人由来のiPS細胞から作った神経前駆細胞を、患者の左脳に約240万個注射して移植した。手術は約3時間で終わり、脳出血などはなかったという。今後、移植した細胞が神経細胞になってドーパミンを出し、パーキンソン病の症状を和らげるか効果を確認する。

 患者計7人の治験を予定し、今回が1例目。効果を確認するまで約3年かかり、2022年度までに全員の治験を終える計画となっている。

 治験は、国から医薬品や再生医療製品として承認を受ける目的で医薬品医療機器法に基づく厳しい基準で実施される。治験で有効データが得られれば条件付きで早期承認が可能になり、一般医療として保険適用が認められる。京大は22~23年度ごろの承認を目指している。

 iPS細胞の移植は目の難病治療の臨床試験でも行われ、今回の移植は国内3例目。【渡辺諒、鳥井真平】



 人工多能性幹細胞(iPS細胞)から神経の細胞を作り、パーキンソン病患者の脳に移植する臨床試験(治験)を進めている京都大は9日、1人目の患者への移植を世界で初めて実施したと発表した。今後、腫瘍ができないかなどの安全面を検証し、2人目以降の移植に進む。

 京都大によると、移植手術は50歳代の男性患者に対して行われ、容体は安定しているという。

 パーキンソン病は、脳内で情報を伝える物質「ドーパミン」を出す神経細胞が減り、体を動かしにくくなったり、震えが起きたりする難病。

 高橋淳教授らのチームは、健康な人から作ったiPS細胞を神経のもとになる細胞(前駆細胞)に変えて、患者の脳に移植した。移植した細胞は脳内で神経細胞になり、ドーパミンを分泌する見込みだという。

 手術は10月に行われ、約3時間かけて約240万個の前駆細胞が脳の左側に移植された。安全性を慎重に確認し、問題がなければ約半年後に脳の右側にも移植する。手術後は2年間、腫瘍ができないかどうかや、症状が改善するかなど効果を調べる。 

 iPS細胞から作った細胞の移植は、理化学研究所が2014年以降、目の難病患者を対象に行った臨床研究に続き2件目となった。実用化が近く国の基準が厳しい治験は、今回が初めて。治験が成功すれば、チームは大日本住友製薬(大阪市)と連携して製剤化を目指す。




 京都大が人工多能性幹細胞(iPS細胞)をパーキンソン病の患者に移植する臨床試験(治験)を始めた。島根県雲南市の元中学校教諭、錦織幸弘さん(54)は「元の体に戻りたい。一日も早く治療法を確立してほしい」と希望を託す。

 右手に震えを感じていた2006年、医師からパーキンソン病と告げられた。「目の前が真っ暗になる思いで、自分の人生は終わった」とショックを受けた。他の医師にも意見を求めたが、診断は覆らなかった。

 やがて足が前に出ず、歩けなくなるなど病状が進行。14年3月、脳に電極を埋め込む手術を決断し、電気の刺激で症状を抑えることに成功した。15年4月、いったん指導教員として職場復帰し、翌年度に教壇に立つことを目指した。

 だが、教室で机の間を歩き回ることができず、16年3月に52歳で退職した。現在は1日5回薬を服用。昼間は車を運転して外出するが、薬の効きが悪くなる朝夕は電動車いすで生活している。

 錦織さんが受けた手術は徐々に効果が薄れ、3~7年ごとに電池の交換手術が必要になるという。iPS治療は全ての患者に有効とは限らず、実用化も10年先とみられている。

 それでも錦織さんは毎日、自宅に取り付けた鉄棒で懸垂などのトレーニングに励む。iPS治療の実用化を見据え、「体の準備ができているようにしたい。普通の人と同じように転ばずに歩きたい」と話す。 



 京都大病院は9日、様々な細胞に変化する人のiPS細胞(人工多能性幹細胞)から神経細胞を作り、パーキンソン病にかかった50歳代の男性患者の脳に移植したと、記者会見で発表した。保険適用を目指した臨床試験(治験)計画の一環で、iPS細胞から作った神経細胞をパーキンソン病患者に移植した手術は、世界初となる。

 京大の高橋淳教授(脳神経外科)らは、京大iPS細胞研究所が備蓄する健康な人のiPS細胞から、脳内の情報伝達物質ドーパミンを分泌する神経細胞を作製した。京大病院で10月、患者の脳の左側に約240万個の細胞を、特殊な注射針で移植した。後日、右側にも移植を行う。
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