3連休最初の2日間となった先週末(11月21~22日)の全国映画動員ランキング。映画館の「秋枯れ」状態についてこのところ毎週のように書いてきて少々飽きてきたのだが、先週末は遂に底が抜けてしまった。初登場1位となった『レインツリーの国』は、1位の作品としては今年のワースト記録となる動員9万1726人、興収1億2394万4520円という数字。ただし、全国190スクリーンという上映館数をふまえればこれは決して悪い数字ではなく、本来は1位を獲るような大作ではない作品が、他の作品の不甲斐なさによってたまたま1位になったと見るべきだろう。

 初登場2位は人気アニメの新作劇場版『ガールズ&パンツァー 劇場版』。動員は8万4752人、興収は1億2843万8980円。こちらも全国77スクリーンという小規模公開の作品としては大健闘。ちなみに、1位の『レインツリーの国』も2位の『ガールズ&パンツァー 劇場版』も配給はショウゲート。非メジャーの作品が1、2フィニッシュ、しかもそれが同じ配給会社というのも、全体の数字があまりにも低いことから生まれた珍しい記録だ。

 クリスマスシーズンの前はどこの国でも映画館で閑古鳥が鳴いているかというとそんなわけはなく、この11月は日本より一足早く公開された『007 スペクター』(日本公開は12月4日。しかし、秋枯れ状態が続く興行側の要請もあったからだろうか、急遽今週末の27日~29日に全国の劇場で先行公開される)が世界中で特大ヒットを記録中。そして、先週末その『007 スペクター』をほぼすべての国で蹴落として圧倒的な記録で1位となったのが『ハンガー・ゲーム』シリーズの最終作『ハンガー・ゲーム FINAL: レボリューション』だ。

 2008年の『トワイライト』シリーズ1作目の世界的ヒット以来、この7年間(日本を除く)世界中で一大ブームを巻き起こしてきた「ファンタジー/SF系ヤング・アダルト小説の映画化作品」。実は『ハンガー・ゲーム』の世界興収も2013年の2作目『ハンガー・ゲーム2』がピークで、今回の『ハンガー・ゲーム FINAL: レボリューション』の本国での初動を見る限りブームも安定期に入ってきたと言える段階(それでもとんでもない数字だが)ではあるのだが、それでもまだしばらくは映画界における大きな勢力であり続けるだろう。

 さて、その『ハンガー・ゲーム FINAL: レボリューション』。シリーズ3作目の前作『ハンガー・ゲーム FINAL:レジスタンス』は本国公開から7ヶ月遅れて日本公開という謎の公開タイミングでファンを失望させたものの、今回は一転して日本でもほぼ世界と同じタイミングで先週末に公開された。結果はオープニング2日間で動員3万8430人、興収5312万0500円で初登場9位という成績。ちなみに本国アメリカではオープニング3日間で1億277万ドルの興収を稼いだので、3日間と2日間の違いはあるものの、およそ240分の1(!)の数字だ。「ヤング・アダルト小説の映画化」という枠組を超えて、作品を追うごとに名実ともにハリウッドを代表するブロックバスター映画に成長した同シリーズだが、結局最後まで日本ではまったく火が点かなかった。

 『ハンガー・ゲーム』、『ダイバージェント』、『メイズ・ランナー』と続いてきた「ファンタジー/SF系ヤング・アダルト小説の映画化作品」が日本で当たらない理由は二つあると考える。一つは、日本では既にこのジャンルの役割を「マンガ原作の映画化作品」が果たしていて、メインストリームにおいて余剰マーケットが存在しないこと。もう一つは、日本ではヤング・アダルトならぬ本当の意味でのアダルト層の観客に届かなかったこと。今やハリウッド・ナンバーワン女優となった主演のジェニファー・ローレンスをはじめ、ジュリアン・ムーア、フィリップ・シーモア・ホフマン(本作が遺作となった)、ドナルド・サザーランドと錚々たる役者陣が揃っていることからもわかるように、『ハンガー・ゲーム FINAL: レボリューション』の世界的ヒットを支えているのは必ずしもティーン層だけでなく、そこから広がっていった幅広い観客層だ(アメリカではヤング・アダルト小説にはまる大人が増えていることが、近年の大きな文化的トピックにもなっているという)。

 では、今後「ヤング・アダルト小説の映画化作品」を日本でヒットさせるためには、アダルト層にアピールすることが重要かというと、そう簡単でもないだろう。やはり、あくまでもコアとなるティーン層の支持があって、そこから広がっていくという形でないと、全世代的にアピールしていくことは難しいのではないか。そういう意味では、むしろ現在日本で量産されている少女マンガも含む「マンガ原作の映画化作品」を、ティーン層だけでなくアダルト層や海外の観客層の観賞にも耐えうる作品として真摯に作り上げていくことが、『トワイライト』や『ハンガー・ゲーム』の大成功から日本の映画界が学ぶべきことなのではないか、と前向きの提案を最後にしておきたい。