中国・上海で開幕したフィギュアスケートの世界選手権に出場する羽生結弦選手が、空港で着けていた「日の丸」のマスクが話題となっている。

【写真】高機能マスクを製造する工場内の様子

 その正体は、愛知県の中小企業が開発した花粉症対策の高性能マスク。羽生選手のため特別に用意したわけではなく、社員の思い入れからあしらった「日の丸マスク」が発売前の〝非公式〟商品だったため、ちょっとした波紋も呼んでしまっているのだ。

 3月23日、上海の空港に降り立った羽生選手は、大会2連覇に向けた気合を感じさせる鋭い目つき。しかし、その顔の下半分は白い大判のマスクで覆い、報道陣の呼び掛けにも無言のまま、急ぎ足で迎えの車に乗り込んだ。

 その姿がテレビやネットニュースなどで流されると、ファンはマスクに付いていた「日の丸」に注目。「日の丸のマスクってだけで羽生くんの決意がわかる」「あれは日本メーカーのもの?」などの声がネット上を行き交った。

■ 「まさか羽生選手が使ってくれるとは…」

 人一倍、驚いたのは愛知県豊橋市に本社を構えるメッシュ製造業「くればぁ」の中河原毅専務(35)だ。「まさか羽生選手が使ってくれるとは…」と戸惑いながら「間違いなく、うちの製品です」と明かす。

 同社は50年前に小さな縫製会社として創業。主に工場の作業着などを手掛けていたが、「頭を使って賢く(クレバーに)生きよう」と説く先代の父を追う中河原専務が、100ナノメートル(1万分の1ミリ)単位の超高精度メッシュを応用したマスク開発に乗り出した。6年前の発売時はほとんど売れなかったものの、中国でPM2.5などの大気汚染が深刻化した一昨年ごろから徐々に売れ始め、今は国内外から注文が殺到する。

 繊維技術を生かして、表面に静電気を発生させない独自加工などを施したマスクは、新型ウイルス対策にも有効だという。昨年は西アフリカで流行したエボラ出血熱の感染予防のため、約1万枚のマスクをアフリカ諸国に無償提供。ギニア大使から感謝状が贈られた。

 昨秋、こうした話を聞きつけたスポーツ関係者から「花粉症に悩む選手のためにマスクを作ってほしい」と依頼を受け、新たな商品開発に着手。花粉症を研究する埼玉大学の研究者の協力を得て、60ナノメートルという微小な花粉アレルゲンを99%シャットアウトしながら、独自の形状や素材で息苦しさを感じさせず、100回ほど洗って再利用できる新商品を作り上げた。

■ 「応援のメッセージとして日の丸を付けた」

 価格は従来品と同程度の1枚9000円前後に設定、一般発売日を3月29日に決めた上で、依頼したスポーツ関係者に数十個を先行販売していた。中河原専務は「特に誰と聞いていたわけではないが、日本を代表するプロアスリートにも使ってもらい、それをみんなで応援しようというメッセージを込め、社名とともに日の丸を付けた」。その1つが羽生選手の手に渡るとは、思いもよらなかったと話す。

 重度の花粉症という話もある羽生選手だが、なぜあのマスクを選び、どう使っていたか、詳しくは分からない。ただ、「テレビで見る限り、何度も洗って使ってくれているようだ」と中河原専務は見る。同社がスポンサーというわけではないので、あくまで個人の判断のはず。しかし、問題はあの「日の丸」だった。見ようによっては、「日本代表」の公式的なグッズだと思われてしまう。

 日本スケート連盟に聞くと、「愛知のメーカー製とは知らなかったが、すでに問い合わせなどを受けている」とした上で、「あくまで羽生選手が個人的にしていたようだが、連盟の選手は公の場で日の丸やJAPANなどがあしらわれた(非公式な)ものは誤解を招くため身につけないことになっている。今後は慎むようにと羽生選手サイドに指導した」と明かした。

 重要な大会の直前であり、競技以外の部分で騒がれ、羽生選手の演技に影響が出ることは誰しも避けたい。ただ、波紋が広がってしまっていることは事実だ。

■ 月に100枚生産するのが精いっぱい

 「羽生選手は悪気なくつけてくれたのだと思うが、問題になったとしたら申し訳ない。当社としては羽生選手を利用して売るつもりはまったくない」と中河原専務は釈明する。すでに同社の商品だと特定したファンが予約を入れているようだが、50人ほどの従業員で1点1点手作りするので、月に100枚生産するのが精いっぱいだという。

 羽生選手は27日夜にショートプログラム、3月28日夜にフリー出場を控える。汚れた空気も雑音もシャットアウトして、最高の演技を見せてくれることだろう。



 上海で開催されているフィギュアスケート世界選手権で羽生結弦選手(20)は日本選手初の連覇に挑む。

日の丸マスクの画像はこちら

 腹部の手術、右足首のねんざ明けの状態に注目が集まる一方、上海浦東空港で着用していた日の丸マスクがちょっとした話題になっている。

■「マスクほしい」という声も

 2015年3月23日、上海入りした羽生選手は、空港ロビーで待ち構えていた報道陣の問いかけに無言を貫き、足早に車に乗り込んだ。しかしニュース映像を見ていたファンは、マスク左ほほ部分に小さくあしらわれたな日の丸を目ざとく見つけ、

  「マスクすごい。日の丸だ!」
  「気合い入ってそう!」
  「それにしても特殊そうなマスクだな...」

とネットですぐさま話題を集めた。選手団公式マスクだと思った人もいて、「マスクほしい」という声も上がった。

 しかし日本スケート連盟によると、このマスクは公式のものではなく、「個人的に使用しているもの」と説明する。そもそも過激派組織「イスラム国」の事件を受け、海外遠征する選手には「日の丸」「JAPAN」などのデザインがあるウェアの着用は避けるよう通達している。そのため今回のマスク着用で、連盟は羽生選手に注意を行ったという。

マスクは1個1万1980円、約100回まで洗って使用できる

 実はこのマスクは、メッシュ素材メーカー「くればぁ」(愛知県豊橋市)の製品だ。日の丸には着用するアスリートたちへの応援が込められているそうで、3月29日の一般販売に先駆けて、以前から問い合わせがあったアスリートらに先行販売していたものが羽生選手の手に渡っていたようだ。

 同社専務取締役の中河原毅さんによると、羽生選手の着用に気が付いたのは、ほかの客からの問い合わせがあったからだという。複数のアスリートから注文があったことは把握していたものの、そのうちの1つが羽生選手のスタッフからだったとは知らなかった。「まさか使ってくれているとは思わなかった。従業員にファンも多く、みんなで喜んでいます」という。

 マスクは1個1万1980円となかなかの値段だが、鼻の高さやアゴ下までの長さに合わせたオーダーメードで生産され、約100回まで洗って使用できる。テレビを見て、「何度も洗って使ってくれている質感でした」と喜んでいる。

 すでに注文は殺到しているが、手作りのため1か月で約100個の生産が限界だそうだ。同社にとっては思わぬ話題となったわけだが、「羽生選手を広告塔にするつもりはありません」とし、羽生選手が連盟から注意を受けたことを気にしている様子だった。