フィギュアスケートの世界選手権は25日、上海東方体育中心で開幕する。日本勢初の連覇を目指すソチ五輪男子金メダルの羽生結弦(20)=ANA=は初練習でトーループとサルコーの2種類の4回転ジャンプに成功。昨年末の腹部手術とその後の右足首捻挫からの回復をアピールした。閻涵(19)=中国=と激突して負傷した、昨年11月の中国杯で起きた悪夢を払拭(ふっしょく)する。

 何度でもよみがえる。まるでターミネーターだ。頭から流れる血で赤く染めたあのリンクに、羽生が帰ってきた。黄色い声援を浴びながら因縁の銀盤に立つと、そっと氷を触ってから勢いよく滑り出した。驚異的な回復力で、この日の公式練習では2種類の4回転ジャンプを跳んだ。

 「戻ってきたなというか、いろんなことがあったが、やっとこうやって皆さんの前に立って演技する覚悟ができるコンディションになった」

 昨年末に「尿膜管遺残症」の手術を受け、腹部を4センチ切った。2週間の入院後、約4週間は自宅で療養。初めて体にメスが入り、「筋肉の感覚に誤差があった」という。焦って練習する中で右足首を負傷。また2週間動けず、一時はこの舞台に「立てないかも」と危機感を抱いた。

 本格的な練習に打ち込めたのは3月に入ってからだったという。万全ではない状況で、不運の始まりだった上海決戦に臨む。「思い出さなくはない」とトラウマをぬぐい去れたわけではないが、逆境を力に変える生き方が真骨頂だ。

 「きょう滑った感じで『こんなこともあった』と思ったが、皆さんが思っている以上に全然気にしていない。僕にとってあれは過去。今できることをまず今やりたい」

 あの事故の後、立て続けにアクシデントに見舞われた。幾重もの困難を乗り越えて迎える大一番。完全復活で周囲の雑音を封じ込める。


 プリンスが因縁のリンクに立った。25日開幕のフィギュアスケート世界選手権に出場する羽生結弦(ゆづる、20=ANA)が24日、公式練習に参加。今大会は昨年11月8日、中国選手と激突した中国杯と同じ会場で行われる。136日ぶりに同じリンクで滑り、サルコーとトーループの4回転ジャンプに成功。昨年末の腹部手術、練習再開後の右足首捻挫の不安も払拭(ふっしょく)した。

 リンクに立った瞬間、あのシーンがフラッシュバックした。昨年11月の中国杯の男子フリー直前練習で、中国選手と激突。「思い出さなくはないですよ。こんなこともあったんだなって」と明かした羽生は、「でも」と続けた。「皆さんが思っている以上に気にしていない。中国杯は中国杯、世界選手権は世界選手権。あれは過去なので」。悪夢を振り払うように、公式練習でサルコー、トーループの4回転ジャンプを立て続けに決めた。

 昨年末、「尿膜管遺残症」と診断され、腹部の手術を受けた。体にメスを入れるのは初めての経験だった。「へそのところを4センチ切った」。2週間の入院、4週間の安静を経て2月に練習を再開したが、今度は右足首を捻挫。さらに2週間の休養を強いられ、今大会に向けた本格的なトレーニングは3月に入ってからスタート。出場できない不安を感じたこともある。今も右足首にはテーピングは欠かせない。完調ではないが、「演技できるコンディションになった。そこが幸せだなと思う」と笑みを浮かべた。

 ソチ五輪を制した羽生は、中国でも大人気だ。その一挙一動に、公式練習に訪れたファンから黄色い歓声が上がる。練習を終えると、中国人女性ファンが「ユヅー、アリガトゴザイマシタ」と日本語で絶叫。一礼してリンクを去る際には、大きな拍手に包まれた。練習では転倒もあったが、「本番じゃなくて練習での失敗なので。いろんなものが見つかって良かった」と手応え十分。男子ショートプログラムは27日、フリーは28日に行われる。日本人初の連覇に向け、プリンスがコンディションを上げていく。

 ▼中国杯での激突 14年11月8日、GPシリーズ中国杯男子フリー直前の6分間練習で、羽生と閻涵が正面衝突した。仰向けのまましばらく動けなかった羽生は頭と顎から流血。頭に包帯、顎にばんそうこうをつけて強行出場し、5回転倒しながら合計237・55点で2位に入った。翌9日に緊急帰国し、精密検査の結果、頭部挫創や右足関節捻挫など5カ所負傷していた。


 フィギュアスケートの世界選手権は25日に中国・上海で開幕する。日本選手初の2連覇を目指すソチ五輪金メダリストの羽生結弦(20)=ANA=が24日、当地での公式練習に初参加し、トウループとサルコーの2種類の4回転ジャンプに成功。昨年末の全日本選手権以来約3か月ぶりに公の場で滑った王者が、昨年末の腹部手術とその後の右足首捻挫からの回復をアピールした。男子SPは27日、女子SPは26日に実施され、男女フリーは28日に行われる。

 昨年11月のGPシリーズ第3戦中国杯で中国選手と激突し、頭から流れる血で赤く染めたリンク。あの事故をきっかけに、今季の羽生は腹部手術、右足首捻挫とアクシデント続きだった。幾重もの困難を乗り越えて迎える大一番。

 「戻ってきたなという気持ち」

 黄色い声援を浴びながら因縁の銀盤に立つと、そっと氷を触ってから勢いよく滑り出した。

 昨年末に尿膜管遺残症の手術を受け、腹部を4センチ切った。2週間の入院後、約4週間は自宅で療養。初めて体にメスが入り「筋肉の感覚に誤差があった」という。焦って練習する中で右足首を負傷。また2週間は動けず、一時はこの舞台に「立てないかも」との思いもよぎった。本格的な練習に打ち込めたのは3月に入ってからだったと明かした。

 3連覇を飾った全日本選手権以来、約3か月ぶりに公の場で滑った羽生は、驚異的な回復力で、この日は2種類の4回転ジャンプを跳んだ。テーピングはしているが「こうやって滑ることができている。自分の中ではまったく問題ないと思っている。不安はない」と強気な言葉が並んだ。

 25日の開会式にゲストスケーターとして参加する06年トリノ五輪金メダリストのエフゲニー・プルシェンコ氏(ロシア)が会場を訪れ、将来性豊かな選手として真っ先に羽生の名前を挙げた。公式練習を見守り「彼は自分のスタイルを持っており、素晴らしい未来がある」と手放しでたたえた。

 中国杯の悪夢が消えることはない。それでも「皆さんが思っている以上に気にしていない。あれは過去」と言い切った。日本人初の連覇に挑む大会。20歳の五輪王者は、逆境を力に変える覚悟に満ちている。


フィギュアスケート世界選手権の開幕を翌日に控えた3月24日(火)の男子公式練習、羽生結弦がリンクサイドに現れた瞬間、リンクの空気は一変した。

【写真を見る】あの事故が起きたリンク。羽生結弦はいつも通り氷に手を触れ、練習を開始する

ファンやメディアが期待と不安を抱きながら見守る緊張感の中、羽生はどこまでも冷静だった。時折笑みを浮かべ、普段通りに滑る。スケーティングで体を温めてから、ジャンプ練習に挑んだ。

ところが、である。ジャンプがいつもと違う。トリプルアクセルは全く回転が足りていない。トリプル+トリプルにおいてもいつもの美しい軸が取れない。やはりまだ復調していないのか。

そう思った矢先にオーサーコーチから指示が出た。なんと基礎のスケーティングの確認をし始めたではないか。世界選手権の公式練習だ。

練習終わりにスケーティングで締める選手は多いが、ジャンプ練習の途中にスケーティングの確認をする選手など見たことがない。

しかし、これには大きな意味があった。自主練習を続けていた羽生。スケーティングに狂いが生じていることをオーサーコーチはすぐに見抜いたようだ。メインリンクの氷の感触を確かめる意味もあった。そして再開したジャンプ練習で、羽生のパフォーマンスは一変!

あの羽生特有の細くて美しい軸が復活し、カウンターからのトリプルアクセルも完璧にこなす。数回に渡るトライの後、4回転トゥループも見事に着氷してみせた。

試合本番前にメインリンクで練習する機会はこの日のみ。失敗しても笑みを見せ、ジャンプの入りのタイミング、目標とするフェンスの位置を丹念に確認する姿が印象的だった。

羽生はすでに本番を見据え、緻密な計算を立てて練習していたのだ。そして練習の後半では4回転サルコウにも挑んだ。

1度目は失敗したが、2度目で着氷!この日、4回転ジャンプはトゥループを2回、サルコウを1回の合計3回成功させた。初日の公式練習においてここまでのパフォーマンスを見せるとは…想像を遥かに超えたでき栄えだ。

練習後の取材、まず羽生が口にしたのは感謝の言葉。「ここまで戻って来られました。皆さんの前に立って演技を披露する、その覚悟ができました。2週間の入院、4週間の自宅療養、そして練習再開後に捻挫をしてしまい、再び2週間の休養期間がありました。本格的な練習を始められたのは3月の初めです。ここまで来られたのは周りの皆さんのサポートのおかげです」。

手術では、腹部を4cmほど切り、腹筋の感覚にズレが生じたことが捻挫の一因ではないかと分析。ここ数カ月間で羽生を襲ったアクシデントの数々を考えれば、通常ならば長期休養しても不思議ではない。それらをすべて乗り越え、傍目には無謀な挑戦にも思える今回の調整過程を、羽生はどこまでも冷静に取り組んでいた。

「ここはあの事故が起きた会場ですが、僕は皆さんが思うほど気にしてません。中国杯は過去のこと。今は目の前の世界選手権に向けて、自分ができることをしていきたい」。

そして、「今は、スケートを滑れることがうれしい、楽しい」と続けた。これこそ、ファンやメディアが待ち望んでいた言葉だ。

世界選手権は長丁場の戦いであり、練習のできが良かったとはいえ、本番はまた別の話。小塚崇彦のように本番までの調整過程と割り切り、この日は軽めのジャンプ練習に留めた選手もいる。

初日から全開の調整を行った羽生の判断がどういった結果をもたらすか、それはまだ分からない。それでも王者としてのスケートを初日から披露した姿勢に、敬意を表したい。

デニス・テンとの一騎打ちが予想される今回の世界選手権。100%の状態ではないかもしれないが、羽生自身が決断し、取り組んできた挑戦の意味を、演技を通して見せてくれることだろう。ショートプログラムは27日(金)の夜。羽生結弦から目が離せない。【中村康一】



 【上海=勝俣智子】フィギュアスケートの世界選手権が25日、中国・上海で開幕する。

 24日は公式練習が行われ、日本選手初の2連覇に挑む羽生結弦(ANA)が、優勝した昨年12月の全日本選手権以来、約3か月ぶりに公式の場に姿を見せた。

 23日は公式練習を休んだ羽生は、この日が開幕前に本番のリンクを使える最初で最後となった。昨年11月の中国杯、フリー直前の6分間練習で衝突のアクシデントがあったのと同じ会場。「思い出さなくはないが、気にしていない」と言い、会場の感覚を確かめるため、4回転や連続3回転ジャンプに何度も挑んできれいに着氷した。

 ただ、ショートプログラム(SP)の曲をかけた練習では、冒頭の4回転ジャンプで転倒し、トリプルアクセル(3回転半ジャンプ)でも着氷が乱れた。昨年末に腹部を手術。「2週間の入院、4週間の自宅安静」を経て練習を再開直後、右足を捻挫した。「ちゃんとした練習を再開したのは3月初め」というブランクの影響にも思えるが、羽生自身は「いっぱい時間があったので不安はなく、右足も問題ない」と否定した。

 男子のSPは27日、フリーは28日に行われる。


 フィギュアスケートの世界選手権が25日、中国・上海で開幕する。27日にショートプログラム(SP)がある男子では、昨年末の全日本選手権以来の復帰戦となる羽生結弦(ANA)が2連覇をめざす。26日にSPがある女子は、12季連続で守ってきた出場3枠を守れるかが焦点だ。フリーは男女とも28日にある。

【写真】世界選手権に向けて練習をする無良崇人=白井伸洋撮影


 羽生は24日夜、公式練習を行った。公に滑りを披露したのは、全日本選手権以来、約3カ月ぶり。会場のリンクは、11月の中国杯の公式練習中に閻涵(イエンハン、中)と衝突した因縁の場所だ。

 SPの曲をかけた練習では4回転で転倒し、トリプルアクセル(3回転半)もバランスを崩した。一方、曲をかけない時に2種類の4回転を決める場面もあった。練習後、「全日本からの3カ月間、色々あったが、演技する覚悟ができるコンディションになった。幸せだった」と語った。


 【上海時事】フィギュアスケートの世界選手権は25日、中国の上海で開幕する。24日は本番リンクで公式練習が行われ、2連覇を狙う男子の羽生結弦(ANA)、女子の宮原知子(大阪・関大高)らが氷の感触を確かめた。

 羽生は曲をかけた場面ではジャンプでミスがあったが、終盤に2種類の4回転を着氷。腹部の手術と右足首捻挫が重なり、調整遅れも懸念されていたが「滑ることができているので自分の中では問題ない。練習で追い込んできた」と話した。

 全日本選手権覇者の宮原は初舞台でやや緊張の色を見せながらも「調子はすごくいい。楽しく伸び伸びと滑りたい」と明るい表情で話した。

 男子の小塚崇彦(トヨタ自動車)、無良崇人(HIROTA)、女子で初出場の本郷理華(愛知みずほ大瑞穂高)、不振から巻き返しを期す村上佳菜子(中京大)も入念に調整した。

 ショートプログラムは女子が26日、男子が27日にあり、フリーは男女とも28日に行われる。 


"初ものコレクター"が順調なスタートを切った。フィギュアスケートの世界選手権(中国・上海)が25日に開幕。故障続きだったソチ五輪金メダリストの羽生結弦(20=ANA)は、24日の公式練習で復調をアピールした。

 久々に公の場で口を開いた羽生は「戻ってきたな、というか、久しぶりでこんなにメディアに囲まれ、緊張している。やっとこうやって皆さんの前に立って演技する覚悟ができるコンディションになった。まずそこを幸せだと思っている」と、前向きに語った。

 上海入りする前、日本スケート連盟の小林芳子強化部長(59)が「ストレスやプレッシャーに押し潰されないよう、守ってあげたい」と羽生の状態を明かさなかったことで、状況が良くないのかと思われた。しかし、この日の公式練習ではトーループ、サルコーと2種類の4回転ジャンプを成功させ、仕上がりは上々だ。

 昨年11月の中国杯で中国選手と衝突し流血。昨年末に腹部手術、今年に入って右足首を捻挫と困難な状況が続いた。それでも主要大会は絶対に休まず、タイトルを獲得してきた。「彼は日本人初、世界初といった大きな記録に魅力を感じる選手」(日本スケート連盟関係者)。体調を心配されても結果を出し、GPファイナルでも日本人「初」連覇を達成した。今大会も日本人「初」の世界選手権連覇というタイトルがかかるとあって、持ち前の精神力で乗り切れそうだ。

 この日は、衝突という悪夢があった昨年の中国杯以降、初めて同じリンクに立った。「思い出さなくはない。今日滑った感じで『こんなこともあった』と思ったが、皆さんが思っている以上に全然気にしていない。僕にとってあれは過去」とキッパリ。大会の主役は揺るがない。