フジテレビ系で木曜深夜0時50分に放送されるアニメ枠「ノイタミナ」が4月、10周年を迎える。作画や音楽など高いクオリティーに加え、挑戦的な作品作りが評判を呼び、多くの視聴者に「深夜アニメ」の魅力を伝えてきた。フジの松崎容子アニメ開発部長は「アニメファンだけではなく、一般の視聴者が見ても面白いと思ってもらえるアニメ枠をつくることができた」と話している。(本間英士)

■アニメ枠の"ブランド"づくり

 ノイタミナは、アニメーション(Animation)を逆さにローマ字読みした造語。「アニメの常識をひっくり返す」との意味を込め、平成17年4月にスタートした。

 松崎部長によると、当時の制作陣は「何か新しいことをやらないと、アニメはいわゆる『オタク』向けの作品と、ジブリの2分野に留まってしまう」という危機感を持っていたといい、「アニメという表現方法で新しい挑戦ができ、かつ『月9(げつく)』(月曜夜9時のフジの人気ドラマ枠)のような定着した放送枠をつくりたかった」と振り返る。

 最初の作品は、人気少女漫画を原作にした「ハチミツとクローバー」。その後も、「Paradise Kiss」や「のだめカンタービレ」など、一般の視聴者層にも好まれる漫画をアニメ化した。アニメーション研究家の氷川竜介さんは「それまで、あまり深夜アニメを見ていなかった若い女性も楽しめ、話題にできるアニメを放送してきた。新たな視聴者層を開拓したことに加え、放送枠により、定期的な『視聴習慣』をつくった意義は大きい」と指摘する。

■オリジナル「あの花」社会現象に

 ノイタミナの"転機"となった作品は、21年に放送された「東のエデン」だという。原作がなく、ノイタミナのために書き下ろされた初のオリジナル作品で、後に劇場版が前後編で公開されるなど人気を博した。松崎部長は「オリジナル作品でもやれる、という自信がついた」と振り返る。

 オリジナル作品の中には、アニメファン以外にも広く認知された作品もある。幼なじみの死を引きずる高校生たちの恋や友情、成長を扱った作品「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」(通称「あの花」)は、話の展開や演出の巧みさが人気を集めた。舞台となった埼玉・秩父には「聖地巡礼」するファンが集まり、街ぐるみのイベントも開催されるなど社会現象にもなった。

■絵、音楽…視聴者の心に「爪痕」を

 これまでノイタミナで放送されたアニメは50作品。挑戦的な映像作りで話題となった作品も多い。「化猫」など古典ホラーを独自解釈で映像化した「怪 ~ayakashi~」は、独特の雰囲気と映像美が話題になった。「空中ブランコ」ではアニメと実写を組み合わせ、「放浪息子」では原作漫画の淡い色調や線画をアニメで再現した。

 音楽に対するこだわりも特徴だ。「ハチミツとクローバー」ではアニメソングではなく、スピッツやスガシカオら人気アーティストの楽曲を使用。ジャズが題材の「坂道のアポロン」では、実際にミュージシャンが「一発録り」で収録を行い、作品で使われた。「のだめカンタービレ」「四月は君の嘘」などクラシック音楽を扱った作品も演奏シーンのクオリティーの高さが作品に厚みを加えた。

 ノイタミナ編集長を務める森彬俊(あきとし)プロデューサーは「チャンネルをザッピングする際、絵や音楽にぐっときて、チャンネルを合わせてくれるとすごくうれしい。見た視聴者の心に"爪痕"を残せるような作品をこれからも作っていきたい」と話している。

■映画にも注力 4月から1枠に

 ノイタミナでは4月から、放送するアニメを従来の2枠から1枠に減らす。狙いについて、森プロデューサーは「劇場版にも力を入れるため。1枠にすることで、アニメ自体のクオリティーも上げたい」と説明する。

 映画は、過去に2度、ノイタミナでアニメが放送され、その続編となる「劇場版 PSYCHO-PASS(サイコパス)」(公開中)が56万人超(22日現在)の動員を記録するなど好調。今後は、長井龍雪(たつゆき)監督ら「あの花」の制作陣が再集結した「心が叫びたがってるんだ。」などが劇場公開される。

 ノイタミナの今後のラインアップは、小室哲哉さんが音楽を手掛ける「パンチライン」や、江戸川乱歩の小説を原案にした「乱歩奇譚」、昨年ドラマ化された「すべてがFになる」などが予定されている。