◆自分さらけ出すか、隠すか

 「愛の伝道師、SILVA姉さんと、愛やセックスについてみんなで深く考えてみよう」。ハスキーな声が、木曜夜のラジオから流れてくる。

 歌手のSILVAさんがパーソナリティーを務めるニッポン放送の人気番組。例えば、「私が幸せを感じる時」といったその日の告白テーマが発表されるや電話が鳴り響き、机の上はパソコンから打ち出された電子メールやファクシミリの記録紙であふれる。

 「不意に彼氏からケータイにメールが入った時」(16歳)、「男を思い通りに調教している時」(23歳)など、応答してくるのは、10―20歳代の女性たちがほとんど。SILVAさんは、「その気持ち大切にね」「ラブだね、のろけだね」などと合いの手を入れるだけ。説教はしない。

 ラジオは、顔が見えず、匿名性が守られるので、性の告白にはうってつけのメディアだった。ところが、匿名性に加えて、だれもが世界中の人に情報発信できるインターネットの出現は、告白の世界を急速に変化させている。だれかに自分を見てほしい、もっと気にかけてほしいと思っている自己愛の強い人間が、自らのプライバシーを丸ごとさらけ出す状況をエスカレートさせているのだ。

 ある検索データベースで「性の体験告白」を売り物にしている個人ホームページを調べてみると、約4万件にものぼる。その一つの人気ホームページには、「人に見られていないと、快感を味わえない」「妻を別の男に抱かせてみたい」など、過激な書き込みも目立つ。このページを運営している30歳代の男性は、「現実世界では言えそうにないこともネットならつづれるわけで、自分の本当の姿をだれかに知らせたい欲求は強まっている。他人の告白を読んで、自分と同じと確認し、安心する人もいるのでは」と分析する。

 ただ、“露出者”人生を送ることにも、新たな問題が出てくる。フリーライターの下関マグロさん(41)は、「もてない自分も1度女の子から声をかけられたい」と、自宅の電話番号を自著の表紙に印刷したほか、レディースコミックに顔写真つきの個人広告を掲載した。さらに、女の子の反応をもとにデート日記に仕立て、雑誌とホームページに公開してきた。「人間は隠すものがあるから、いつもびくびくしている。恥ずかしいところも全部露出しちゃえば生きるのが楽になると思った」からだ。

 しかし、実際はそう単純ではなかった。「性生活も秘め事の部分が残っていて初めてドキドキする。それがなくなったら実につまらない。人に言えない性幻想もこっそり育てることを考えなくてはダメですねえ」

 幻想は、確かにタブーがあるからこそふくらむ。性生活の露出が進み、性の抑圧の重しがはずれた現代では、コンピューターゲームの登場人物との恋愛の方が妄想がふくらみ、脳が刺激されるという若者が増えるのも当然と思えなくもない。さらけ出すか秘密をつくるか。その危ういバランスに悩みつつ、人はさらなる性幻想を求め続けるのだろうか。(永峰好美、菊池裕之、大森亜紀)(おわり)