◆女だって楽しみたい

「楽しいセックスイメージを提案したい」と、カラフルな女性向けグッズを扱う店も登場(東京・千代田区で)

 先月末、東京都内の書店に並んだCDサイズの女性向け新雑誌「Vg(バイブガールズ)」は、巻頭特集にあまり語られることのなかった「女性のオナニー」を掲げ、体験告白などの刺激的な内容で話題を呼んだ。

 問題提起の言葉はこうだ。「気持ちよくなりたいからオナニーする。このシンプルな命題を口に出したり実践したりするのに、オンナはどれぐらい待たなくちゃいけなかったんだろう」

 雑誌の編集発行人、北原みのりさん(28)は、大学院で女性学を研究、東京・千代田区に3年前、明るいセックスを提案する「ラブピースクラブ」を開店。インターネットを通じて今年5月に知り合った20―30歳代の女性9人と「女性が性について本音で語り合えるメディアをつくろう」と発案、創刊にこぎつけた。

 中高生時代、通学電車で、男性週刊誌の中づり広告に女性の性を興味本位にみるような不快な見出しが躍っているのを見て、ショックだった。「男女平等なんて言ったって、しょせん女は男の欲望の対象にすぎない」と思うと、やりきれない気持ちに沈んだ。

 そんな思春期の原体験が、「セックスを必要以上に淫靡(いんび)でセンセーショナルで、暴力的に描くのは男性の思い込み。新雑誌では、女性の目線で、楽しくてハッピーで温かいセックスイメージを提案していきたい」という熱い思いにつながっている。

 この数年、女性向け雑誌ではセックス特集が売れ行きを左右するといわれ、性のみならず妊娠や出産体験まであけすけに告白した誌面が目につく。社会は女性が性をオープンに語ることに寛容になったといっていい。小説でも最近は、女性作家が多様な性愛を描く「エロティカ」というジャンルが注目されつつある。

 「エロティカ」は辞書で「好色本」などと訳されるが、この分野の先進国米国では70年代後半、40歳代の主婦たちにより「男性がつくった画一的な性イメージを捨て、放縦な流れに自分の性を解放して書いてみよう」という真摯(しんし)な運動から始まった。短編を集めた「私自身のエロティカ」は、全米で50万部を超えるロングセラーになった。わが国の代表作家としては、松浦理英子さん(41)や森奈津子さん(32)らがいる。

 「ほどよく筋肉のついたこの引き締まった肉体もまた、格別に美しいわ。美しい男。かわいい男。かよわい男……。奇妙な愛情が湧(わ)き出てきた。良和に身をゆだねたときよりも、ずっと強烈な快美感。わたしは何度も意識をさらわれそうになってしまう」(森さんの「一卵性」から)

 4年間のOL生活を経て作家デビューした森さんは、「男の筋肉質な肉体も女のなめらかな肌も美しいのに、全然関心が向かないで、性器の結合にこだわり続けるのが男性が書くポルノの特徴。私は、読んで皮膚感覚の快楽が呼び起こされるような作品を目指したいな」という。

 女性たちがそれぞれに、自分が心地よいとか楽しんでみたいとか思っている性を表現することで、今まで気づかれなかった性の多面性があぶり出されつつあるようだ。