ユネスコの世界文化遺産への登録を目指している山梨県と静岡県の『富士山』について、ユネスコの諮問機関は「世界遺産に登録することがふさわしい」とする勧告をまとめ、『富士山』は6月にも正式に世界遺産に登録される見通しとなりました。
一方、神奈川県の『鎌倉』については、登録がふさわしくないと勧告しました。




 文化庁は30日、「富士山」(山梨、静岡両県)について、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の諮問機関、国際記念物遺跡会議(イコモス)が三保の松原(静岡市)を除外することを条件に世界遺産に登録するよう勧告したと発表した。イコモスは「武家の古都・鎌倉」(神奈川県)は登録見送りを勧告した。
 ユネスコは6月16日からカンボジアのプノンペンで開かれる世界遺産委員会で、勧告内容を踏まえて登録の可否を審議する。 




 世界遺産への登録の可否を調査する「国際記念物遺跡会議」(イコモス、本部・パリ)は30日、日本が推薦していた「富士山」(山梨、静岡両県)を「三保松原を除き登録」、「鎌倉」(神奈川県)を「不登録」とするよう、国連教育科学文化機関(ユネスコ)に勧告した。今年6月にカンボジアで開かれる第37回ユネスコ世界遺産委員会で、正式に決定される見通しだ。【福田隆】

 イコモスの勧告は(1)登録(2)情報照会(3)登録延期(4)不登録の4種類がある。「登録」はほぼ世界遺産に登録されることが確実で、「情報照会」と「登録延期」は追加情報の提出や推薦書の再検討が必要になる。「不登録」は原則再推薦ができない。イコモスはユネスコの諮問機関で、各国から世界遺産に推薦された案件の現地調査などを行う専門家組織。文化庁によると、過去の事例からみて、イコモスが登録を勧告した案件は、世界遺産委員会でもほぼ間違いなく登録が認められるが「不登録」から「登録」になった例はここ5年では1例もないという。

 ただ、イコモス勧告で「情報照会」や「登録延期」だった案件が、世界遺産委員会で「登録」に格上げされるケースも少なくない。07年の石見銀山(いわみぎんざん)(島根県)は、イコモス勧告では「登録延期」だったが、日本政府がユネスコに説明をやり直した結果、世界遺産委員会で一転「登録」となった。平泉は08年にイコモス勧告、世界遺産委員会ともに「登録延期」とされた後、再推薦を経て11年に登録された。

 富士山は当初は自然遺産としての世界遺産登録を目指したが、山麓(さんろく)開発がもたらしたごみなどの環境問題がネックとなり、03年の国内選考で落選。その後、文化遺産として再挑戦した経緯がある。イコモスは昨年12月、日本政府に対し、構成資産を広く一体的に管理することや、富士山域から離れた位置にある「三保松原(みほのまつばら)」を資産から除外することなどを要請。日本政府は今年2月、16年をめどに管理計画を見直す意向を示す一方、三保松原については芸術や信仰の面で欠かせないことから除外を認めない回答をしていた。

 鎌倉は92年に暫定リストに掲載されてから、22年越しの案件。当初は10年の登録を目指していたが、08年にユネスコが平泉を「登録延期」(その後11年に登録)としたことを受け、コンセプトの練り直しが必要と判断し、目標年を13年度に見直した。その後、武家社会について「Home of the SAMURAI」と外国人にもわかりやすいフレーズを使って、既に世界遺産に登録されている京都や奈良との違いを分かりやすく打ち出した。





ユネスコの世界文化遺産への登録を目指している山梨県と静岡県の「富士山」について、ユネスコの諮問機関は「世界遺産に登録することがふさわしい」とする勧告をまとめ、「富士山」は6月にも正式に世界遺産に登録される見通しになりました。
一方、神奈川県の「鎌倉」については、世界遺産への登録がふさわしくないと勧告しました。

日本政府は去年1月、白糸ノ滝や山頂にある信仰の遺跡群など33の名所や史跡で構成される「富士山」と、鶴岡八幡宮や鎌倉大仏など21の寺や神社などからなる『鎌倉』について、ユネスコの世界文化遺産に推薦し、ユネスコの諮問機関「イコモス」は去年8月から9月にかけて現地調査を行うなどして検討してきました。この結果、「イコモス」は、「富士山」について「世界遺産に登録することがふさわしい」とする勧告をまとめました。
イコモスの勧告は世界遺産の審査に大きな影響を与えることから、「富士山」は6月にカンボジアのプノンペンで開かれるユネスコの世界遺産委員会で正式に登録される見通しになりました。一方、「鎌倉」について「イコモス」は、世界遺産への登録がふさわしくないと勧告しました。日本で、これまでに世界遺産に登録されているのは、広島県の原爆ドームなど文化遺産12件と、鹿児島県の屋久島など自然遺産4件です。




 文化庁は1日未明、記者会見し、「富士山」(山梨、静岡両県)が世界文化遺産にふさわしいとした国際記念物遺跡会議(イコモス)の勧告概要を明らかにした。「日本の国家的象徴だが、その影響は日本をはるかに越えて及んでいる」として、登録条件の「顕著な普遍的価値」を認めている。
 一方、除外対象とした静岡市の三保松原(みほのまつばら)については、「(山から)45キロ離れ、山の一部として考慮し得ない」と評価。審美的観点から防波堤が望ましくないとも指摘した。
 さらに、富士山の構成資産の関連性を妨げる開発が進んでおり、さらなる開発の制御や来訪者対策が急務と言及。名称を精神性と芸術的関連性を反映するよう詳細なものに変更し、2016年までに保全状況を報告することも求めた。
 一方、「武家の古都・鎌倉」(神奈川県)については、歴史的価値は認めらたが、現在残っている資産では「顕著な普遍的価値」を証明できていないと判断した。
 6月の世界遺産委員会で「不登録」と決議されると、原則として再推薦はできない。文化庁は「関係省庁や自治体と相談して対応を決める」としているが、過去には申請自体を取り下げた国も多いという。
 記念物課の榎本剛課長は「自治体や地域などのさまざまな取り組みが実ったと認識している」とする一方、「改めてイコモスの審査の厳しさを認識した」と述べた。 





 富士山が世界文化遺産に登録される見通しとなったことで、山梨県世界遺産推進課には1日未明、安堵(あんど)の空気が流れた。市川満課長(54)は「今はやるべきことで忙しく、実感が湧くのはもう少し時間がたってからかも」と控えめに話した。
 文化庁から一報が入ったのは、30日午後11時25分ごろ。「記載(登録)勧告です」。職員の苦労が報われた瞬間だったが、すぐに知事や関係自治体との連絡や調整に追われた。
 河口湖畔など富士山麓で四つのホテルを経営する旅館グループ総支配人天野隆さん(53)は「尖閣問題などで中国人観光客が大幅に減る中、欧州などからの観光客呼び込みの追い風になる」と歓迎した。
 一方、三保松原(みほのまつばら)の除外を登録の条件とされた静岡県。富士山との組み合わせは古来、多くの絵や和歌のモチーフとされ、その文化的価値をアピールしてきただけに、県関係者からは複雑な声が聞かれた。
 杉山泰裕世界遺産推進課長は「最終決定ではない。三保松原を含む登録に全力を傾ける」と強調する一方、「(松原から)富士山を眺めることが芸術の源泉と言えていなかったかもしれない」と肩を落とした。ある県幹部は「昨年、イコモス調査員が三保松原に来たのは富士山の見えにくい夏場だった。それが影響したのでは」と推測した。
 三保松原近くのホテルのおかみ遠藤まゆみさん(55)は「残念。松原の景観を入れずに、日本人にとって伝統的な富士山の文化は理解されたことにならない」と語った。 




◇大変喜ばしい
 近藤誠一文化庁長官の話 富士山が世界遺産としてふさわしいとの評価を受けられたことは大変喜ばしい。三保の松原について十分な理解が得られていないのは残念。鎌倉の評価については大変残念に受け止めている。
◇万感胸に迫る
 山梨県の横内正明知事の話 勧告段階とはいえ、登録の実現を大いに期待できる結果が得られたことは大変喜ばしく、万感胸に迫るものがある。ただ勧告が「三保の松原」を除外する内容は残念。静岡と連携し、6月開催の世界遺産委員会に向け万全を期したい。
◇三保松原含め登録期す
 静岡県の川勝平太知事の話 大変喜ばしいが、三保松原についてイコモスの十分な理解が得られていないことは非常に残念だ。文化庁や関係自治体との連携を図りながら、6月の世界遺産委員会に向け、三保松原を含めた登録がされるよう万全を期す。 





 富士山の世界文化遺産への登録勧告を受け、山梨県の横内正明知事は「勧告段階とはいえ、登録の実現を大いに期待できる結果で、大変喜ばしい。これまでの長年にわたる地元住民や関係者の多大な理解と尽力を思えば、万感胸に迫る」とコメント。三保松原(静岡市清水区)の除外については「残念に思う」とした上で「今後は国や静岡県と連携を図りながら、6月に開催される世界遺産委員会に向けて万全を期したい」と気を引き締めた。

 静岡県の川勝平太知事は「大変喜ばしいこと。登録に向け大きく前進したと実感している。しかしながら、構成資産の一つである『三保松原』について、イコモスの十分な理解が得られていないことは非常に残念。引き続き、世界遺産委員会に向けて、『三保松原』を含めた登録がなされるよう万全を期してまいります」とのコメントを出した。




 「これまで素通りだった登山客も、世界遺産登録を機に訪れるようになる」。世界文化遺産に登録申請している構成資産の一つ、山宮浅間(やまみやせんげん)神社(静岡県富士宮市山宮)氏子総代の農業、赤池通昌(みちまさ)さん(70)も朗報を待っていた一人だ。

【ニュースの一報】富士山:世界遺産「登録」を勧告 ユネスコ諮問機関

 子供の頃、境内で木登りしたり、隠れんぼで駆け回ったり、ラジオ体操をしたりする「遊び場」だった。生活に根ざした神社が世界遺産になる見通しだ。「先祖が千年守ってきた神社を、千年先まで子孫が守ってくれれば」と願う。

 山宮には拝殿や本殿がない。その代わり、富士山を望む遥拝所(ようはいじょ)があり、富士山自体を神と考える古代からの富士山祭祀(さいし)の形をとどめる。遥拝所は溶岩流の先端部に位置し、周囲に溶岩の石で築かれた石塁が巡る。古代の富士山信仰の中心地だった。

 信仰の中心が別の神社に移ったため、赤池さんの子供時代は参拝客のほとんどいない神社だったが、世界遺産の登録に向けた動きが活発になった2010年ごろから外国人の参拝者も増えた。パワースポットブームで訪れる人もいる。

 赤池さん自慢の富士は山宮から望む雪化粧した冬の姿だ。「俗化させるつもりはないが、多くの人が訪れ、もう一度来たいと思ってもらえる場所にしたい」と話す。赤池さんは足かけ23年務めた総代を来年退く。後継総代の近くの農業、赤池健次さん(63)も「一人でも多くの人に山宮を知ってもらいたい」と顔をほころばせた。【石川宏】




 国連教育科学文化機関(ユネスコ)の諮問機関「国際記念物遺跡会議」(イコモス)が、富士山(山梨県、静岡県)の世界文化遺産としての条件付きの登録を勧告。悲願だった正式登録への道が開けた。時代を超えて芸術文化を育み、山岳に対する信仰を抱いてきた人々は、「日本の宝」が世界へ羽ばたく喜びを分かち合った。一方、武家の古都を掲げた鎌倉の願いはかなわなかった。

【ニュースの一報】富士山:世界遺産「登録」を勧告 ユネスコ諮問機関

 富士山については、山梨、静岡両県が中心となって昨年3月、「富士山世界文化遺産協議会」をつくり、保全活動などを話し合ってきた。

 地元住民も、世界遺産登録を願う声は強かった。「表情がどんどん変わり、いくら見ていても飽きない」。富士山のふもと、山梨県忍野(おしの)村で民宿「富士の家(や)」を営む天野七六(しちろく)さん(75)と妻憲子さん(73)は言う。2人で霊峰を写真に収め続け、いつしか富士にほれ込んだ写真愛好家が集まる「カメラマンの宿」と呼ばれるようになった。天気や四季で笑ったり怒ったり--。富士山は千変万化だ。

 宿泊客から「おやじさん」と親しまれる七六さんは、富士山以外の写真を撮らない。旅行にもカメラは持たない徹底ぶりだ。初めてカメラを触ったのは朝鮮戦争が始まった1950年。米軍キャンプ(現在の北富士演習場)で働いていた父が戦地へ行く米兵と交換したものだった。以来60年余。撮りためた富士山は約1万3000枚に上る。見ごろの花などが構図に入る「旬」の撮影場所は約130カ所。宿泊客にポイントを案内し、絞りやシャッタースピードなども気軽にアドバイスする。

 憲子さんは87年、七六さんからカメラを贈られたのを機に富士を撮り始めた。同年から13年間、民宿の同じ場所から同じ角度で富士山をほぼ毎日撮影。11年目には4000枚を超し、貴重な定点観測の記録として気象庁にも写真を提供した。

 約40年にわたり民宿を営む2人は、富士山を取り巻く風景が変わるのを見てきた。「昔はかやぶきだったが、今は現代建築となった」と七六さん。「絵になる」場所が年々減る中、「時代の流れ」と自らを納得させてきた。

 天野さん夫婦は世界文化遺産の登録を待ちわびていた。「登録されれば富士山が良い状態でずっと残る。それが楽しみなんです。富士山は私にとって永遠の彼女ですから」。いたずらっぽく七六さんは笑った。【山口香織】