厚生労働省は16日未明、神戸市在住の男性が発熱などの症状を訴え、神戸市環境保健研究所で遺伝子検査をした結果、新型インフルエンザ感染を示す判定が出たと発表した。神戸市によると、同市内の男子高校生。男性に海外渡航歴はなく、国立感染症研究所が改めて検査を実施する。感染研でも同じ結果なら、検疫での水際阻止ではない国内初の感染者発生になり、感染ルート解明が急務になる。今回のケースが確定すれば政府行動計画は第1段階(海外発生期)から第2段階(国内発生早期)に移行する。

 政府はこれまで、新型インフルエンザ発生国からのウイルス上陸阻止に対策の力点を置き、これまで4人の感染者を水際で発見してきた。しかし、渡航歴のない人の感染が確定すれば、対策の大幅な転換が必要になる。

 厚労省によると、男性は11日に悪寒を訴え、12日に37.4度の熱が出たため、医師の診察を受けた。簡易検査の結果はA型インフルエンザ陽性で、さらに市環境保健研究所が15日に遺伝子検査をしたところ、新型陽性の判定が出た。

 神戸市はこの段階で、新型インフルエンザを否定できない例として、厚労省に届け出た。

 男性は15日の時点で平熱に戻っており、自宅療養中。12日から抗インフルエンザ薬のリレンザを服用しているという。

 政府の行動計画では、第2段階に移行すると、都道府県単位での一斉休校や集会の自粛、企業の業務縮小などの感染防止策が取られることになっている。

 しかし今回の新型インフルエンザについて政府対策本部の専門家諮問委員会は「季節性インフルエンザと極めて似ている」との見解を示しており、政府は行動計画を弾力的に運用し、大幅な活動制限は避ける構えだ。【清水健二】


【神戸高校での新型インフルエンザをめぐる経緯】

5月8日 インフルエンザと思われる症状で部活動を休む生徒が出始める 

 11日 バレーボール部の3年男子生徒Aが悪寒を訴える 

 12日 生徒Aが発熱、診療所での簡易検査でインフルエンザA型陽性。診療所が詳しい検査を神戸市環境保健研究所に依頼。同日夜に同じ高校の2年女子生徒Bが発熱 

 13日 簡易検査で生徒BがA型陽性 

 15日 同じ高校のサッカー部の2年男子生徒Cが発熱で高校を早退、簡易検査でA型陽性。生徒Aの検体の詳しい検査で新型の豚インフルエンザ陽性 

 同日午後11時ごろ 市が生徒Aに自宅から出ないよう要請、厚生労働省に連絡 

 16日午前0時ごろ 市が生徒Aと高校に新型インフルエンザの疑いを伝える 

 同日午前0時半ごろ 高校に教職員が集まり、各生徒の家庭に新型インフルエンザの疑いについて連絡 

 同日午前1時すぎ 市が記者会見で「新型インフルエンザ国内初感染の疑い濃厚」と説明。同じころ生徒Cが指定病院に入院 

 同日午前3時15分 生徒Aが指定病院に入院。この時点でほぼ回復 

 同日午前4時半 生徒Bが指定病院に入院、その後に新型インフルエンザ陽性 

 同日午前7時 市が新型インフルエンザ対策本部員会議を開催。この高校と同じ学区の市立幼稚園・小中高校などを22日まで休校にすることを決定 

 同日午前9時ごろ 市が記者会見で、同じ高校の別の生徒17人が体調不良を訴えていると説明 

 同日午前11時ごろ 国立感染症研究所が生徒Aの新型インフルエンザ感染を確認


 新型インフルエンザ(豚インフルエンザ)の感染が水際の検疫以外で初めて確認された16日、関係者は未明から対応に追われた。

 感染が確認された高校生の通う神戸市内の県立高校では体調不良を訴える同級生がほかにも出ており、市内では学校の休校やイベントの中止も決まった。市幹部は「想定外の事態」と表情を曇らせるが、厚生労働省幹部は「海外で感染者が増え続ける中、日本だけ水際で止められるわけはない。大事なのは感染を拡大させないこと」と冷静に受け止めた。
「(通常の)季節性インフルエンザに近い症状。タミフルなどの治療薬も有効なので、冷静に対応してください」

 神戸市の矢田立郎市長は16日午前8時50分からの記者会見で緊急メッセージを読み上げた。市民の不安をあおらないよう注意を払いながら、手洗いやうがいの励行、マスク着用、不要不急の外出自粛などを求めた。

 渡航歴のない市内の高校生に感染の疑いが浮上したと神戸市が発表したのは同日午前1時10分頃。市幹部は「(海外渡航者の診察窓口となる)発熱外来から患者が出るのが通常と考えており、予想外」と話した。

 市では、この高校生の通う県立高校に近い同市東灘、灘、中央区にある学校の休校や、16、17日に開催予定だった神戸まつりのメーンパレードなどを中止することを決定した。一方、市の「発熱相談センター」には、16日朝から「自分も渡航歴はないが熱がある」「医療機関で診てもらえるのか」などの相談が殺到。市では、電話回線を3回線から9回線に増やして対応した。

 厚労省の担当者も「初の感染者は発生国から帰国して健康観察の対象になっている人から見つかると思っていた」と驚く。だが、「濃厚接触者の中に健康観察の対象者がいる可能性もある。今は、全力で調査に集中したい」と話した。

 感染が確定した生徒らが通う県立高校は16日未明から校長ら幹部が集まり、対応を検討。16、17日の部活動の禁止を決め、全校生徒約1000人には外出を自粛するよう連絡を始めた。

 同校によると、感染の確認された生徒が所属するバレーボール部の部員を中心に今月8日以降、発熱やせきなどの症状が出始め、インフルエンザの症状を訴える生徒も17人いるという。大型連休中、海外旅行をした生徒は数人いたが、その中には体調不良を訴える者はいなかった。

 校長は「今週初めから欠席者が多かったが、まさか新型の可能性があるとは」と驚いた様子で話した。

 一方、「神戸まつり」のイベントが中止となった神戸市中央区の東遊園地では、前日までに設営していた飲食店など約70の出店を業者が次々と撤去。たこ焼き店を片づけていた店主の鹿野辰也さん(45)は「新型インフルエンザの影響の大きさを身をもって感じた。予報が雨だったので食材をあまり仕入れていなかったのが唯一の救い」と言い聞かせるように話した。


 新型インフルエンザの感染可能性がある患者が現れた。入国前に感染が判明した大阪府の高校生らと違い、感染が確定すれば政府から国内での発生と認定される初めてのケースだ。今回の患者に渡航歴はない。何らかのかたちで新型ウイルスが国内に侵入し、すでに感染が始まっている可能性もある。

 だが、今回のウイルスは感染しても大半は症状が軽いため、冷静に受け止めたい。一方で政府は国内で急激な感染拡大が起こりうるという前提に立った防止策の強化と、感染経路の解明を急がなければならない。

 米疾病対策センター(CDC)によると、新型ウイルスは発症する前日から発症後1週間、周囲に感染する。潜伏期間は1〜7日だ。患者の2メートル以内に近付き、せきやくしゃみで飛び散ったウイルスを含む唾液(だえき)を吸い込んだり、ウイルスが付着した手で目や鼻の粘膜に触れることで感染する。これまでの新型に関する研究結果では、若年層で重症化する割合が高い一方、高齢者で感染者がほとんどいないなど理由がはっきりしない点もある。だが、新型の感染者の症状は季節性インフルエンザと同程度と考えられ、通常のインフルエンザ対策を再確認することが求められる。

 感染者が出た場合、保健所が中心になり濃厚接触者の追跡を始める。感染経路を追跡することができて始めて有効な対策をとることができる。感染者の感染源の特定は欠かせない。厚生労働省は速やかに情報を提供し、国民に冷静な対応を呼び掛ける必要がある。

 また、感染者が高校生であることからも、学校現場での対応を明確にすることも急がれる。過去の感染症の流行で明らかなように、児童や生徒が一緒に行動する学校は地域に最も感染を拡大しやすい。教育への影響を最小限に抑えるとともに、被害を拡大させない対応が求められる。

 今回の新型インフルエンザはだれもが感染してしまうと同時に、他者に感染させる恐れがある。手洗いを励行し、人ごみを避けるなど予防に向けた基本を徹底し、発症が疑われれば冷静かつ早期に各地の保健所などに電話相談することが大切だ。【関東晋慈】

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 ◇新型インフルエンザ相談窓口

▽厚生労働省 03・3501・9031
 (午前9時〜午後9時)

▽農林水産省 03・3591・6529
 (午前10時〜午後5時、平日のみ)

▽外務省 03・3580・3311内線4101、4102
 (午前9時〜午後5時)

▽文部科学省 03・6734・2957
 (午前9時〜午後6時半)


厚生労働省は16日、新型インフルエンザ感染の疑いが持たれていた神戸市内の男子高校生について、新型の豚インフルエンザに感染していることを確認した、と発表した。国立感染症研究所による詳しい検査で分かったもので、検疫による水際阻止以外での、初の国内感染例となった。

   また、この高校生と同じ学校に通う2人の高校生(男女)についても、神戸市環境保健研究所の検査で、陽性反応を確認。厚労省によると3人には渡航歴がなく、国内において人から人へ感染が広がっている可能性がある。現在、3人は入院治療中だが、同高校ではほかにも17人が体調不良を訴えているといい、疫学調査は5月10日にさかのぼって実施される。

   こうした状況を受け、神戸市では同日すぐに「新型インフルエンザ対策本部員会議」を設置し対応した。灘区、東灘区、中央区の全市立小中学校と幼稚園、高校を16日から22日までの7日間、休園・休校として修学旅行も延期。私立や隣接する芦屋市立の学校にも同様の措置を求める。また、17日に予定されていた「第39回神戸まつり」も、新型インフルエンザによる中止が発表された。

「問い合わせがコンスタントに続いている状況」

   神戸市に隣接する尼崎市でも対応に追われている。保険企画課の担当者は、「防災対策会議が開かれている最中です。市民からは、予防法などついての問いあわせがかなり入っていて、かなり混乱がみられますね。なんとか拡大を防がないと・・・」と明かす。

   兵庫県疾病対策室でも「電話での問い合わせがコンスタントに続いている状況です。地域はどこなのか。症状がインフルエンザのようだがどうすればいいか――不安に感じていらっしゃる人が多いようです。感染がこれ以上広がらないように、こちらも冷静な対応をしていきたい」と話していた。

   SNS「mixi」では、この件を報じた記事が日記ランキングで1位となり、もっとも関心度が高い話題だ。たとえば、

「頼みますからこの時期に広まらないでくださいよ………11月までは絶対学校休めないんだから……… 」
「モロ地元やんね。近所の薬局屋もマスク完売してたわ。ってなわけで会社からマスクが支給されて、通勤時はマスクを義務付けられました」
「妻は妊娠中ですからただでさえ免疫力が低下しています。僕が外からウィルスを持ってこないよう気をつけないといけないです」
「とうとうやってきましたね大々的に広がるのも時間の問題なのか?……だとしたら嫌だなあ」

などと書き込まれ、感染の拡大を心配する声が多く寄せられている。